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エピローグ「始まりと終わり」

Author: 烏羽 楓
last update publish date: 2026-11-02 20:00:40

 ――後日。

 いつもの日常に戻った。

 だが、今後同じようなことが二度と起こらないとは限らない。

 だから俺は、魔神となった力も利用して、ダンジョンの最深部に“念願”だった世界を構築した。

 表向きのダンジョンボスとして、リルベアのコピー体を作り、偽のコアルームに配置。

 本体との思考リンクを繋げ、リルベアが遠隔で操作できるようにしたことで、冒険者たちが見ても違和感はないだろう。

 美月はギルドに戻り、報告を済ませたらしい。

 勇者アキラが魔王クゼスに操られる形で結託し、リルベアの封印を解いた――そういう報告だ。

 結果、魔王クゼスと勇者アキラは戦いの果てに死亡。

 だが封印を解かれたリルベアの暴走もあり、自分は勇者としての力を失った。

 どういうわけか、魔王リルベアは「興が冷めたから帰れ」と見逃してくれた――と。

 ……実に美月らしい言い訳だ。

 それからというも
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  • 働きすぎた社畜、死んだらダンジョン核に転生して魔王に!? 〜自由に生きてたら、気づけば勇者と結婚してました〜   エピローグ「始まりと終わり」

     ――後日。 いつもの日常に戻った。 だが、今後同じようなことが二度と起こらないとは限らない。 だから俺は、魔神となった力も利用して、ダンジョンの最深部に“念願”だった世界を構築した。  表向きのダンジョンボスとして、リルベアのコピー体を作り、偽のコアルームに配置。 本体との思考リンクを繋げ、リルベアが遠隔で操作できるようにしたことで、冒険者たちが見ても違和感はないだろう。 美月はギルドに戻り、報告を済ませたらしい。  勇者アキラが魔王クゼスに操られる形で結託し、リルベアの封印を解いた――そういう報告だ。  結果、魔王クゼスと勇者アキラは戦いの果てに死亡。 だが封印を解かれたリルベアの暴走もあり、自分は勇者としての力を失った。  どういうわけか、魔王リルベアは「興が冷めたから帰れ」と見逃してくれた――と。  ……実に美月らしい言い訳だ。 それからというもの、俺たちは最深部の世界で暮らしている。 レイラも、美月も、ゼトスも、リルベアも一緒だ。 すでにいくつかの国も出来て、人々が暮らし、独自の発展を遂げている。 けれど俺たちは……まぁ、田舎の一軒家で平和に過ごしている。 もう変ないざこざに巻き込まれるのも面倒だしな。 美月とは結婚して夫婦になった。 けれども、美月とレイラは相変わらず言い合いばかりだ。 最近は農業のことで喧嘩してるのをよく見る。 ……ほんと、あの二人は仲が良い。 リルベアは、ハンモックに揺られて読書ばかりしている。最初こそ、集中できんだの子供用の遊具みたいだの言っていたが、今ではお気に入りらしい。 ゼトスに至っては、もう完全に犬だ。氷狼王なんて言っても、誰も信じやしないだろう。 死ぬほど働いて、死んだら石ころになって、気づけば魔王になっていた俺が―― 今は元勇者と毒舌眷属に囲まれて、ようやく自由に生きている。

  • 働きすぎた社畜、死んだらダンジョン核に転生して魔王に!? 〜自由に生きてたら、気づけば勇者と結婚してました〜   第60話「戦いの果てに、日常は戻る」

     俺の告げた言葉に、リルベアの表情が驚愕から、ふっと綻ぶ。 豪快な笑みを浮かべると小さな体を反らして笑った。「そうか、神を冠するか。かかっ! ならば、わらわは使徒といったところかの?」「いや、魔王だろ」「知っておるわッ! まったく、そういうところは変わらんのだな」 呆れ半分にため息を吐くリルベア。 その背後で、レイラがぽつりと呟いた。「……石ころも、神になれるのですね」「おーっし、レイラ。お前はあとでお仕置きな?」 俺が笑顔のまま告げると、レイラの顔色が青ざめる。 隣のゼトスは耐えきれず「クククッ」と喉を震わせて笑った。「さて――とりあえず、決着をつけるか」 次の瞬間、俺の身体は瞬間移動で宙を裂き、|悪食《あくじき》の頭上に現れる。 血塗れの塊と化したその巨体は、まだしぶとく蠢いていた。「……あれを喰らって消滅しないあたり、随分喰ってるだろ。あと何回殺せば、お前は消えるんだ?」 俺の視線に射抜かれ、|悪食《あくじき》の瞳孔がわずかに震える。 恐怖――魔を喰らう怪物ですら、抗えぬ本能がそう叫んでいた。 俺は静かに指を弾く。 ――光刃。 無数の白い斬撃が虚空から降り注ぎ、悪食の全身を何千何万と斬り刻んでいく。 血飛沫と断末魔が戦場を覆うが、俺の表情は一切揺るがなかった。  まさに蹂躙。   天災と呼ばれた存在すら、今や虫けら同然だ。 やがて|悪食《あくじき》の動きは鈍り、巨体は膝を折る。「本意ではないにしろ、俺の眷属に牙を剥き、あろうことか美月を奪った。……死してなお、永劫後悔しろ」 俺は最後に手をかざし――振り下ろす。 ――暗転。 視界を覆う闇と重圧に、悪食の身体は塵となり虚空へと呑まれた。 静寂の中で暗転は解け、俺は小さく息を吐く。「……終

  • 働きすぎた社畜、死んだらダンジョン核に転生して魔王に!? 〜自由に生きてたら、気づけば勇者と結婚してました〜   第59話 「理を越えし存在、戦場に降り立つ」

     ――悪食の触手が三人を貫こうと迫った、その瞬間だった。 空気が凍りつく。 音も、臭気も、すべてが掻き消える。  時が止まった。  そう認識できるほどに、異常な静寂が訪れた。「……な、んじゃと……!?」 リルベアの瞳が大きく見開かれる。 だが次の瞬間、彼女は一つの可能性を悟り、背後に視線だけを向けた。 ――繭。 ヴァルトを包み込んでいた漆黒の繭に、亀裂が走る。 ぱきり、と小さな音を合図に、地割れのようなひび割れが空間もろとも広がった。 そこから|迸る《ほとばしる》のは、常識を超えた輝き。 熱でも冷気でもない、ただ“存在”そのものを焼き付ける光が戦場を白に染め上げる。 魔物どもの咆哮が途絶え、悪食の触手すら硬直した。 抗えぬ本能が告げていた。――この力は、決して触れてはならぬものだと。 轟音。 次の瞬間、悪食の触手ごと、周囲の魔物数千体が消し飛んだ。 地鳴りのような残響だけが虚しく響き渡る。 『”成り損ない”の分際で、俺の眷属達に触れるな』  静かに、だが絶対的な力を宿した声が空間を支配した。 その声は胸を震わせ、魂に杭を打つような威圧を孕んでいた。 光の中から姿を現したのは――ヴァルト。 彼は三人の頭上に浮かび、冷たい視線で悪食を見下ろしていた。「――ヴァルト!?」「|主《マスター》……!」「ご無事でなによりです!」 三人の声が、震える。 緊張の糸が切れ、今にも泣き出しそうな表情でこちらを仰ぎ見ていた。 その頬に浮かぶ涙は、恐怖のものではない。絶望の淵から引き上げられた安堵の涙だった。 俺はゆっくりと地へ降り立つと、三人の前に立った。「悪い、遅くなった。あとは任せろ」 短い言葉。だが、それは何よりも強い救いだった。

  • 働きすぎた社畜、死んだらダンジョン核に転生して魔王に!? 〜自由に生きてたら、気づけば勇者と結婚してました〜   第58話「虚無に消えた気配、絶望の影迫る」

     咆哮が響き渡る。 ゼトスは巨躯を揺らし、氷嵐や雷撃と連携しながら魔物どもを蹴散らしていた。 爪を薙げば、骨と肉が爆ぜ飛ぶ。 雷を纏ったゼトスの突進が、百を超える魔物を灰燼に帰す。  リルベアの黒炎が一帯を焼き、レイラの氷刃は嵐のように舞い、触れたものを瞬時に凍り砕く。 三人の戦線はまさに鉄壁――だが、それでも群れは尽きない。 切り裂いたそばから背後を塞ぎ、焼き払ったはずの死骸を踏み台に新たな群れが押し寄せてくる。 終わりが見えぬ奔流は、まるでこの空間そのものが魔物を吐き出しているかのようだった。 このままでは……長くは持たん……! リルベアの胸に焦燥が募る。 しかし繭を背に下がることなど許されぬ。退けば、それはすなわちこの世の終わりを意味する。 ――悪食の触手が振り下ろされる。 腐臭を纏った漆黒の鞭が、空気を切り裂き大地を抉った。「ッ!」 リルベアが地を砕きながら飛び退き、レイラとゼトスが同時に魔法を放った。「《氷棘牢陣(フロスト・プリズン)》!」「《雷轟衝波(サンダー・バースト)》!」 雷と氷が絡み合い、触手を焼き裂きながら群れを押し戻す。 絶叫と轟音が重なり、戦場の空気は灼熱と極寒が入り混じる。 だが、押し返しても押し返しても、群れは膨れ上がるばかりだった。 リルベアの息が荒い。 肩で息をし、毛並みの間から汗とも血ともつかぬ液が滲み出ている。  ゼトスの額には無数の焦げ跡が浮かび、雷撃の輝きは先ほどよりも鈍い。  レイラの頬も青白く、魔力の糸を無理やり繋ぎとめているのが目に見えてわかった。 気づけば、魔力の枯渇がすぐそこまで迫っていた。 ……まずいな。わらわとて限界が近い……! リルベアの魔法発動に遅延が出始め疲弊が顕著に表れる。  レイラの雷光は散り散りに弾け、ゼトスの氷刃も強度を保てなくなっていた。

  • 働きすぎた社畜、死んだらダンジョン核に転生して魔王に!? 〜自由に生きてたら、気づけば勇者と結婚してました〜   第57話「涙と決意、繭を守る戦い」

     ――その頃、ダンジョン内。 繭となったヴァルトを護るように、リルベアは広範囲魔法を連発しながら魔物どもを蹴散らしていた。  魔法が発動するたびに数百体が霧散する。 だが、それでも群れは押し寄せ続ける。まるで尽きぬ黒き波のごとく。 さらに悪食の触手が、容赦なく襲いかかってくる。 腐臭と粘液を纏い、地を穿ちながら迫る猛攻。 リルベアは寸前でかわし、巨大な魔槍を叩き込む。だが――。 流石に数が多すぎる……! 絶え間ない攻撃の連続に、次第に呼吸が荒くなる。疲労で反応が遅れた刹那、触手の一本が音を裂いて迫った。「しまッ――!」 リルベアの瞳が見開かれる。少しの油断だった。 間に合わない。貫かれる――そう思った瞬間。 後方から二つの魔力反応が爆ぜた。「|氷穿槍乱舞《アイシクル・ランページ》!」「|疾風裂斬陣《テンペスト・レイザー》!」 氷槍と風刃が同時に放たれ、触手ごと魔物の群れを薙ぎ払った。 粉砕音と絶叫が響き渡り、リルベアの視界が一気に開ける。「遅くなりました、リルベア様」「ただいま戻りましたぞ!」 振り返れば、戦線離脱していたレイラとゼトスの姿があった。「っかか! よく戻った! おかげで助けられたわ!」  リルベアは声を弾ませ、体勢を整える。 その傍らで、レイラの視線が美月の横たわる姿を捕らえた。 僅かな一瞥――だが、全てを察したように瞳が揺れる。「美月……。こんなところで眠っている場合じゃないでしょう……私たちの決着は、まだ――」 悔しさと悲しさが入り混じった声。振り返らずとも、震える声の奥に涙が滲んでいるのは明らかだった。「まだ戦いは終わっとらんぞ。ヴァルトが戻ってくるまで、持ちこたえるのじゃ!」 リルベアの叱咤に、二人は強く頷いた。「リルベア様、もしかして……あの繭は

  • 働きすぎた社畜、死んだらダンジョン核に転生して魔王に!? 〜自由に生きてたら、気づけば勇者と結婚してました〜   第56話「命を削る代償と、神への渇望」

    ――真っ暗な意識の中、声が響いた。『“システム上”あるとはいえ、まさかランクアップを願うとは思いませんでしたよ。魔王ヴァルト・ノクス――いえ、黒川 陣』 ……この声、どこかで。 どこで聞いたんだっけ――。 あ。そうだ。 これは――世界の声だ。 その響きに引き寄せられるように、ぼやけていた意識が澄み渡っていく。 やがて視界がひらけ、そこに広がっていたのは、何もない真っ白な空間だった。 果てしなく続く光の中、その先に一人の女性が佇んでいる。 白い布で身を包みつつも、その布では隠しきれないほどの美しい肉体。 全身から漂う神々しさが、ただ立っているだけで圧倒的な存在感を生み出していた。「……あなたは」 思わず言葉を漏らす俺に、彼女は凛とした表情を向ける。「私は“世界の声”の主。貴方たちの言葉で言えば――女神、といったところでしょうか」 澄み切った声は耳にすっと入り込み、胸を震わせる。「――何故、ランクアップをしたいと願うのです? 貴方は既に存在し得る者としては最上位。命をかけてまで、何になろうというのです」 何になる、だと? ……そんなのわかんねぇよ。  ただ――。  俺は、自由に生きたいだけだ。 俺を慕ってくれる仲間達と、平和に笑って過ごしたいだけなんだ。 理不尽に奪われるのも、無力に嘆くしかできない自分自身も―― 愛した人ひとりすら守れなかった現実も―― 全部、クソ喰らえだッ! その全てをぶっ壊し、捻じ曲げてでも、ただ自分の理想の平和を手に入れる。 そのための力が、どうしても欲しい。 少しの沈黙のあと、胸の奥からあふれた感情のままに言葉を吐いた。「俺は――神になりたい」 なんの曇りもない言葉だった。 女神を真っ直ぐに見据え、

  • 働きすぎた社畜、死んだらダンジョン核に転生して魔王に!? 〜自由に生きてたら、気づけば勇者と結婚してました〜   プロローグ

     ブラック企業で働いて、どれくらい経っただろうか。数年? 十年? いや、もう数えることすらしなくなった。  俺の名前は黒川 陣。三十代、独身、貯金なし。実家とはほぼ絶縁状態。    職業は、ダンジョン配信を支えるシステムエンジニア──ただの裏方だ。  冒険者たちが映像で派手に活躍する裏で、俺はひたすらバグと睨めっこ。  夜遅くまでログを解析し、朝になれば仕様変更。休日出勤は当たり前。  上司からは「代わりはいくらでもいる」と笑顔で告げられ、深夜のオフィスでひとり、冷えた缶コーヒーを啜る日々。  そして気がつけば、俺は三十代に突入していた。  誕生日を祝ってくれる人はいない。祝う

  • 働きすぎた社畜、死んだらダンジョン核に転生して魔王に!? 〜自由に生きてたら、気づけば勇者と結婚してました〜   第1話「俺はしゃべる石ころらしい」

     ……暗い。  いや、暗いなんてもんじゃない。何も見えないし、何も感じない。ただ、思考だけがぽつんと宙に浮いているような、不気味な感覚。 目を開けているのか閉じているのか、それすらも分からない。 というか、そもそも――俺、生きてんのか? 意識はある。けど体の感覚はゼロだ。手も足も、どこにも存在している気配がない。あるのはただ、やけにクリアな思考だけ。 ……最後に覚えているのは、あのアパート。床が崩れて、天井が落ちてきて―― そうだ、俺は死んだ。 ってことは、ここは死後の世界ってやつか? ……いや、でも、それにしちゃ意識がやけにハッキリしすぎてる。  もっとこう、ふわふわ

  • 働きすぎた社畜、死んだらダンジョン核に転生して魔王に!? 〜自由に生きてたら、気づけば勇者と結婚してました〜   第2話「始祖のヴァンパイアが降臨したけど、ツッコミ厳しくない?」

     眷属召喚――それは、魔王が初めて行う“配下作成”チュートリアルらしい。  核としての魔力が満ちきったタイミングで、世界の声が言った。 《それでは、眷属召喚を開始してください。意識を集中し、あなたの魔力を流し込むように》  いや、ざっくりすぎだろ。集中って言われても、こちとら石ころなんだぞ。  とはいえ、やるしかない。ぐっと意識を内側へ集中させていくと――  ――ドクン。  何かが“脈打った”感覚があった。  そしてその瞬間、俺の核のすぐ目の前に、漆黒の魔方陣が浮かび上がる。 「おお……!」  空気が張り詰める。魔力の奔流が発生し、周囲の岩盤がわずかに振動する。  やがて魔

  • 働きすぎた社畜、死んだらダンジョン核に転生して魔王に!? 〜自由に生きてたら、気づけば勇者と結婚してました〜   第6話「進化の兆しと、新たなる“仲間”の予感」

     画面の奥には、俺の“ダンジョン”の全体図が浮かび上がっていた。 その地図を眺めながら、俺は腕――いや、正確には核だから腕はないけど――まぁそういう感じで考え込む。 やるなら、徹底的にやってやろうじゃねぇか。「まずは階層を増やす。これだけ侵入者が増えてるなら、ワンフロアで収まるわけがないしな」 そう呟きながら、構築開始。 今ある空間の下層に、新たな階層を次々と追加していく。  しかも、ただの迷路じゃ芸がない。  ニ層目は錯視を利用した視覚トラップ中心の構造。 

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